薬屋のひとりごとミニアニメ|三毛猫とは?縁起がいい理由も深堀

東洋医学で深ぼりシリーズ|猫猫の豆知識

三毛猫(みけねこ)とは、白・黒・茶(オレンジ)の3色の毛色をもつ猫の総称です。

三毛猫の写真

三毛猫は縁起の良い猫 ——でも、なぜそう言われているかご存知ですか?

薬屋のひとりごとミニアニメ「猫猫のひとりごと」第25話【三毛猫編】で、猫猫はこう解説していました。

🍃 猫猫の豆知識:ミニアニメ「猫猫のひとりごと」第25話 三毛猫編より 🍃

三毛猫は非常に縁起が良い猫とされている国がある。白が祝福、黒が厄除け、茶は無病息災を象徴しているとか。

実はこの三色の意味、東洋医学の基礎でもある 「五行思想」 と深く結びついているんです。

しかもその歴史を辿ると、唐代の古典文献、清代の猫の専門書、そして日本の招き猫 にまでつながる壮大な物語が見えてきます。

この記事では、猫猫の解説を 五行思想と東洋の歴史という視点 から深掘りしていきます。読み終わる頃には、三毛猫を見る目がちょっと変わるかもしれません 🙂?!

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1. 三毛猫はなぜ特別? — 清代の猫の専門書が記した驚きの事実

🍃 猫猫の豆知識:ミニアニメ「猫猫のひとりごと」第25話 三毛猫編より 🍃
三毛猫は非常に縁起が良い猫とされている国がある。

猫猫が語るように、三毛猫が特別視されてきた歴史は古く、しかもその理由には科学的な裏付けもあるんです。

1-1. 中国最古の猫の専門書《猫苑》に記された三毛猫

三毛猫の特別さを理解するうえで欠かせないのが、清代(1852年)に黄汉が著した《猫苑(びょうえん)》 という書物です。

これは中国最古の猫の専門書とも言えるもので、猫の種類・毛色・相法(良い猫の見分け方)などを体系的にまとめた、いわば古代中国版「猫の百科事典」。すでに失われた古書《相猫経》の内容も収録されており、猫の文化史研究において非常に貴重な文献です。

この《猫苑》に、三毛猫についてこんな記述があります。

「黄白黒相兼、名『玳瑁斑(たいまいはん)』」
——黄・白・黒が混ざったものは「玳瑁斑」と呼ぶ

出典:猫苑, 黄汉 著, 清代咸豊二年(1852)

三毛猫は古代中国では 「玳瑁斑」(たいまいはん) という美しい名前で呼ばれていたんですね。

1-2. 170年前の観察と現代遺伝学の一致

そしてさらに驚くのが、この一節です。

「猫之色杂為雌、純者為雄、所謂玳瑁斑者、杂而雌也」
——猫は色が雑じるものは雌、純色は雄。いわゆる玳瑁斑(三毛猫)は色が雑じった雌である

出典:猫苑, 黄汉 著, 清代咸豊二年(1852)

なんと!170年以上前に、三毛猫がほぼ雌であるという事実を正確に記録していた のです。

現代の遺伝学では、三毛猫の毛色は X染色体上の遺伝子 によって決まることが解明されています。X染色体を2本持つ雌猫(XX)にしか黒とオレンジの両方が現れないため、三毛猫はほぼ雌。雄の三毛猫は約3万匹に1匹の確率(XXY=クラインフェルター症候群)でしか生まれず、繁殖能力もありません。

清代の猫愛好家たちは、遺伝学が存在しない時代に、長年の観察だけで同じ結論に到達していた んですね。

🍃三毛猫の雄が非常に珍しいことは、猫猫が生きていた時代にも知られていて、珍しいからこそ「縁起が良い」と大切にされてきたのかもしれませんね。


2. 五行思想で読み解く三毛猫の三色

不思議に思う女性

そもそも五行思想って何?
三毛猫の三色と五行思想って、どう関係があるの?

2-1. 五行思想って?

五行思想とは、東洋医学の基盤となる古代中国の哲学です

これは万物を 木・火・土・金・水 の5つの要素に分類した考え方で、下の表にあるようにそれぞれに色・季節・臓腑・方位などが対応しています。

五行図のイラスト

五行
五色
五臓
季節 長夏

2-2.五行五色から三毛猫の色をみてみよう

そして、五行にはそれぞれ固有の性質があり、五色はその性質を象徴しています。下の表は、三毛猫の白・黒・黄(茶)についてピックアップしたものです。

五色 五行 象徴 性質 意味
金(きん) 秋の収穫、実り 金属のように堅く純粋なもの 財富・吉祥・清浄
水(すい) 万物を潤す水 深く沈み蓄える力 智恵・潤い・生命の貯蔵
黄(茶) 土(ど) 大地、万物を育む母 すべてを受け止め養う力 安定・蓄積・生育

まずは、白色から見ていきましょう。

白色は財富・吉祥・清浄 の意味を持ちます。吉祥は幸先の良い兆しのことであり、猫猫が言っていた 「白 = 祝福」 はまさにこの「吉祥」の意味と重なりますね 😀 

次に、黒色です。

黒色は智恵・潤い・生命の貯蔵 の意味を持ち、五行では黒色は水が対応します。水は「低きに流れ、蓄える」性質を持ち、これが「邪を下に押し留め封じ込める」という厄除けのイメージと一致します。

さらに古代中国では、 「玄猫(げんびょう)=辟邪之物(邪気を払う存在)」 つまり、「黒猫は邪気を払う存在」と考えらえていました。猫猫が言う 「黒 = 厄除け」 にも直結していますね!

黒猫の写真

不思議に思う女性

あれ?五色では黄(茶)は安定・蓄積・生育…

三毛猫の「茶 = 無病息災」 と重ならないのでは?

たしかに、土の「安定・生育」と無病息災は、少し距離がありそうです。

実はここに、中国と日本の面白い解釈の違い が隠れています…

茶色については第4章で詳しく見ていきますのでお楽しみに 😉

2-3. 「生み出す力」と「留める力」の自己完結型システム

ここからは、三毛猫の白色・黒色・黄色(茶)それぞれの関係性を見ていきましょう。

五行思想には 相生(そうしょう)相克(そうこく) という二つの関係性があります。

相生は「特定の相手を育成する」関係性、相克は「特定の相手を抑制する」関係性です。

五行の相生相剋のイラスト

三毛猫の白(金)・黒(水)・黄(土)の関係を当てはめてみると…

相生(特定の相手を育成する)関係なのは→

  • 黄色と白色の関係=土生金(どしょうきん):土が集まり山となり、鉱物(金属)が産出
  • 白色と黒色の関係=金生水(きんしょうすい :金属が水を生む

相克(特定の相手を抑制する)関係なのは→

  • 黄色と黒色の関係=土克水(どこくすい):土が水をせき止め、流出を防ぐ

つまり三毛猫の三色は「相生だけのきれいな循環」ではなく、相生と相克が共存した自己完結型のシステム を構成しています。

  • 土(黄)が金(白)を 生み出し → 金が水(黒)を 生み出し → 土が水の 流出を防ぐ

🍃「富を生む力」と「富を逃がさない力」の両方が揃っている ——これこそが、三毛猫が「財富循環不息(財が循環し続ける)」の吉兆とされる本質的な理由なのかもしれません。


3. 招き猫のルーツ — 猫と幸運の1600年の物語

ここからは、「猫 = 幸運を呼ぶ」のルーツをたどってみましょう。

3-1. 最古の記録 — 唐代《酉陽雑俎》

猫と吉兆を結びつけた 最古の文献記録 は、唐代(9世紀)の段成式が著した《酉陽雑俎(ゆうようざっそ)》にあります。

「俗言猫洗面過耳則客至」
——俗に「猫が顔を洗って耳を越えると客が来る」という

出典:酉陽雑俎 続集巻八, 段成式 著, 唐代(9世紀)

「猫が前足で顔を洗う仕草」が「客を招く」前兆とされていたのです。

この「前足で招く猫」——どこかで見覚えはありませんか? そう、 日本の招き猫 です。

三毛猫の招き猫の置物

3-2. 招き猫はなぜ三毛猫なのか

招き猫の文化は江戸時代の日本で花開きました。豪徳寺の猫が井伊直孝を雷から救った伝説、浅草・今戸神社の今戸焼の猫人形など、複数の起源説があります。

そして英語版Wikipediaの “Maneki-neko” の項目にはこう記されています。

“The figurine depicts a cat, traditionally a calico Japanese Bobtail”
——招き猫は伝統的に、三毛のジャパニーズボブテイルを描いている

そして、招き猫が伝統的に三毛猫の姿をしているのは、日本でも三色それぞれに縁起の良い意味があったからなのだそうです。

招き猫での意味
開運招福
魔除け・厄除け
赤(茶) 病除け・無病息災

 


4. 中国と日本で異なる「茶色」の解釈

4-1. 同じ猫の同じ色なのに、意味が変わる

ここで気がついた方もいらっしゃるかもしれませんね 😎

そう、三毛猫の「茶色」の解釈が、中国と日本で微妙に異なっている のです。

【茶色の解釈】 中国では 日本では
呼び方 黄色・金色
五行の対応 (黄 = 土行) (赤 = 火行)
象徴する意味 財帛・繁栄(金運) 病除け・無病息災

中国では茶色を「黄」と見なし、五行の「土」に対応させて 財・安定 の意味を込めます。これは第2章でご紹介したとおりです。

一方、日本の猫の毛色分類ではオレンジ系を「赤」と呼び、五行の「火」に対応させて 病除け の意味を込めるのです。

日本で赤色が病除けとされるのには、縄文時代にまで遡る深い信仰があります。特に江戸時代には、天然痘(疱瘡)の流行時に「赤い絵」を門口に貼って魔除けにする 風習が広まりました。

つまり、招き猫の「赤(茶)= 無病息災」は、この日本古来の赤色信仰の延長線上にあります。

尾道にある無病息災にまつわる赤い福石猫

↑ちなみに、これは尾道の猫の細道にある「赤い福石猫」だそうです。よく見ると「無病息災」と書いてありますね 😀

4-2. ミニアニメ【猫猫の豆知識】は日本と中国の架け橋

ミニアニメのお題 「白が祝福、黒が厄除け、茶は無病息災」 は、「日本では」とも「中国では」とも言っていません。

『薬屋のひとりごと』の舞台は古代中国をモデルにした架空の国ですが、視聴者は日本の読者が中心です。「茶 = 無病息災」という解釈は日本的ですし、「白 = 祝福」「黒 = 厄除け」は中国の古典文献とも一致します。

つまりこの猫猫の豆知識には、中国の五行思想と日本の民間信仰が自然に溶け合っている のではないでしょうか?

🍃同じ五行思想という土台を共有しながらも、文化ごとに少しずつ解釈が変わっていく——これもまた東洋文化の奥深さですね。


5. まとめ:三毛猫が教えてくれる五行の知恵

ミニアニメ「猫猫のひとりごと」第25話【三毛猫】から学べる知識をまとめます。

5-1. 猫猫の解説から学べること

✅ 三毛猫の三色は五行思想の「土・金・水」に対応する

中医学の正式な色体表で、白=金、黒=水、黄=土。この三要素は相生と相克が共存する自己完結型のバランスを構成し、「生み出す力」と「留める力」が同時に働きます。

✅ 清代の猫の専門書は、三毛猫の遺伝的特性を170年前に観察していた

《猫苑》の「色杂為雌(色が雑じるのは雌)」という記述は、現代遺伝学の知見と完全に一致します。

✅ 「猫が幸運を呼ぶ」という信仰は1600年以上の歴史を持つ

時代 出来事
南北朝(約1600年前) 陝西省から招き猫に似た猫の石彫が出土
唐代(9世紀) 《酉陽雑俎》に「猫洗面過耳則客至」の記録
清代(1852年) 《猫苑》に三毛猫「玳瑁斑」の記録と相法
江戸時代(1852年) 日本で招き猫(三毛猫の姿)が広まる

5-2. 『薬屋のひとりごと』をもっと楽しむために

今回は、 猫猫が解説してくれた【三毛猫】の豆知識を、五行思想と東洋の歴史という視点からやさしく深掘り してみました。

三毛猫の三色に五行の調和を見出し、猫の仕草に幸運の予兆を読み取る——古代中国の人々の自然観は、1000年以上の時を超えて日本の招き猫にまで受け継がれています。

「この話にはどんな東洋医学的な意味があるんだろう?」「この風習のルーツは何だろう?」 そんな視点で作品を見ると、猫猫の世界がもっと身近に感じられるかもしれませんね。

こうした豆知識を深めながら「薬屋のひとりごと」の世界を一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです 🍃

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※本記事は医療行為を目的としたものではなく、一般的な知識の紹介です。


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この記事を書いた人

柚子

国際中医師(国際中医専門員)|漢方薬局勤務経験あり

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『薬屋のひとりごと』の作品情報のほか、作品中の生薬・漢方をやさしく解説していきたいと思っています。

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